露地栽培の衰退

2023.10.21(土)晴れ、最高温度22度、最低温度16度


                        季節外れの秋のズッキーニ

今年の秋の高温化を見越して初夏の定番野菜であるズッキーニを植えてみました。
このまま地球温暖化が進むと日本の四季の野菜の構図が変わっていくかもしれません。

美味しい野菜(旬菜)が無くなるー露地栽培野菜の衰退― PART1.

最近、野菜を食べて味や香りを感じなくなったことに気がついた方はおられないでしょうか?
キャベツなのか白菜なのか分からない?葉野菜や葱を食べても紙を食べているような食感の悪さを感じる。
ピーマンが苦く元々苦いものだと思っている。
胡瓜やトマトを食べても鼻に抜けるような香りが無い。

野菜は健康のためと思って半ば義務的に食べている。
そんなことを感じている方も多いのでは無いでしょうか

その主な理由は量産を目指した過度な肥料栽培と温室栽培が多くなったからです。
実は有機・無機を問わず肥料栽培やハウス栽培全盛の時代のアンチテーゼとしてうまれてきたのが肥料を使わない自然栽培と言う農法なのです。
それは当然に露地栽培と言うことになります。

              晩秋の5・6番の畑

冬の訪れが間近に迫り、ビニールトンネルもちらほらと見えます。もうすぐこの畑一面は白い世界に変わっていきます。
晩秋の張り詰めたような景色が私は一番好きです。お花畑のように見えているのはレタス系の野菜達です。

 

有機無機を問わず肥料を多投された野菜・ハウス栽培野菜は窒素過多となり、成長が早く完熟しないまま出荷されるためデンプン質の多い野菜となり、
糖分・ビタミンが少なく、栄養価が乏しい。急成長すると野菜は倒れないように筋を張り、歯切れの悪い野菜となります。
子供さんが野菜を嫌う一つの大きな要因となっています。いつまでも口に残り飲み込むタイミングが分からないのです。
特に、ハウス栽培は野菜本来の季節に育てられていない物も多く、野菜本来の味香りなどの美味しさが乏しくなります。

露地野菜は手が掛かり自然のリスクに晒され、成長が遅く美味しいにも拘わらず、見てくれの悪さからか、流通や消費者から敬遠されるために価格も低く評価されず、
露地栽培農家は減少の一途を辿っています。このようにしてスーパーに並ぶ野菜は季節感が無くなり本来の季節野菜の美味しさを失いつつあります。
そんな現状を美味しい野菜を届けたいと願う農園主は淋しく感じております。

 

(美味しい野菜とは何)

消費者が美味しいと感じる野菜を考えて見ましょう。これをマーケティングではセグメント(要因細分化)と称します。

○野菜の個性である味香りが豊かであること→ 味香りは舌先と鼻で感じます。

○歯切れなどの食感が良いこと→ 肉厚で噛みきれない硬い繊維が無いこと。

○エグミや苦みでは無く旨味があること→ グルタミンなどの旨味の他にミネラル分が豊富なこと。

○糖分やビタミン類が豊富であること→ 野菜が完熟していること。

 

肥料栽培やハウス(促成)栽培では野菜の内部がどうなっているかを考えて見ます。

・肥料栽培の野菜は土中に窒素分があれば常に成長し続けると言った性質を持っています。

・肥料栽培ではこの窒素分の調整が難しいのです。成長過程の野菜は内部にデンプン質を貯め込みます。デンプンは苦いのです。

・急成長した野菜は倒れないように葉肉は薄く茎は筋が多く出てきます。

・成長し続ける野菜は野菜の個性である味香りが出難く、かつ土中にミネラル分が乏しいと味香りが薄くなります。

それでは、野菜を美味しくするためにはどうすれば良いのでしょうか?

成長過程では土中に窒素分が緩やかに供給され、完熟期に入ったら土中の窒素分を切ることが必要となります。
なおかつ細胞が正常に育つには土中にバランスの良いミネラル分があることが重要となります。
(ミネラル分は正常細胞形成には不可欠ですので野菜本来の味香りが生まれます)

結論から言いますと、高窒素栽培では野菜はいつまでも生長し続けて完熟はしないのです。

美味しい野菜は必ず、低窒素栽培で育った野菜なのです。

草木堆肥及び露地栽培のメカニズムはその条件に合っております。

                   ビーツ

20年間ビーツを育てています。当初はお客様から食べ方が分からないと言われ随分と苦労しました。
ビーツは野菜の血液と言って血管をきれいにします。茎はきんぴら風に炒めると甘くて美味しい。
荒く摺り下ろしてポテトサラダにします。ボルシチは定番ですね。


このように見てきますと美味しい野菜(完熟野菜)は糖分やビタミン類が豊富でバランスの良いミネラル分が含まれていると言う事になりますから栄養価も高いのです。

 

※岩塩・海塩は何故旨味がある

 旨味の正体は海水に含まれている豊富なミネラル分です。化学合成された精製塩は苦いのです。

※追熟作用

 サツマイモや南瓜を収穫してから何週間も置いておくと蓄えられたデンプンを分解して甘みに変えて行きます。野菜は生き残ろうとしてデンプンを分解して糖分・ビタミンに変換する
 作用のことを追熟と言います。(デンプンではエネルギーにはできない)

次項は「完熟野菜とは?」をご紹介致します。