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麦踏みの風景
(大量生産型粗放農業)―大規模機械化農業
アメリカ型の大規模農業の場合は、人の労力を抑えて大型機械を駆使して、広大な
農地を耕します。大規模農地では、多大な労力を使う除草作業や土を育てる堆肥を
撒くことは難しく、化学肥料や農薬、そして除草剤を使う粗放農業が適しており、
北海道や干拓地にはその粗放農業が行われております。
大豆・麦類・とうもろこし・じゃがいもなどの大量生産型の近代農業が発展してき
ました。
大量の除草剤を使うため、アメリカでは(除草剤でも死なない野菜)遺伝子組み換え
作物が普及しています。
農産物の品目は年間2~3種類程度の大量生産型の単作栽培が行われております。
広大な農地を大型機械を使って栽培する作物は量の確保や拡大が優先され、大量流通
に載せるために均一化された農産物が要求されます。これが粗放農業です。
反当収量は少ないですが生産規模が大きく大量生産が可能です。
そこでは農産物の安全性とか、栄養価とか、美味しさとかはあまり評価されません。
例えば、ジャガイモの種蒔き前に除草剤を使い、収穫直前にじゃがいもの茎や葉を
枯らすためにもう一度除草剤を使います。大型の収穫機械を使い易くするためです。
国土の狭い日本でも大概の穀類生産はこの粗放型農業を行っております。
これらのことはほとんどの消費者は知りませんし、知ろうともしません。
草木堆肥歴18年の圃場(3番)
(多品目生産型高集約農業)―中山間地などの小規模農地
日本の国土は狭く、農地は一反(300坪)単位であちこちに点在しており、特に
中山間地を多く抱えた日本の農地には大規模(大型)機械化農業は効率が悪く不向き
です。
日本では古来から狭い農地を労力を掛けて多品目の野菜を年間3~4回転させる
高集約農業が行われてきました。反当収量は粗放型農業と比べて2~3倍と高いが
労力や手間が掛かります。
各農家は肥料や堆肥にも個性やこだわりがあり、土作りに力を入れて品質や美味しさ
を競い合う手作り感があり、美味しく高品質野菜でした。
戦後、日本では食糧増産を目的としてアメリカ型の近代農業(大規模機械化農業)が
奨励され、単作栽培へと移り、農協などを通して補助金漬け農業政策として推進され
ていましたが、農産物の内外価格差は埋まらず、農業離れは進み、急速に日本型の
多品目栽培・高集約型農業は衰退していきました。
※農産物の内外価格差問題
中山間地の多い日本の農地は狭く手間と労力が掛かります。そのため、農産物販売
価格は逆に3~4倍以上高くなり、特に穀類の内外価格差が大きくなり安価な海外産
と比べて競争力が乏しく、日本の農業が衰退した大きな要因ともなっています。
この農地は以前は放置された竹藪でした。3年を掛けて伐根から土作りを行い、よう
やく野菜を生産できるまでになりました。草木堆肥歴10年になろうかとしています。
多品種栽培を行っており、大きな家庭菜園と言う処でしょうか。
むかし野菜の邑は、破砕機・タイヤショベル・トラクターなどの近代機器は装備して
おりますが、まるで昔にタイムスリップしたかのような古き日本の多品目栽培・高集
約型農業のモデル農園とも言えます。年間100種類以上の品目を栽培し、畑は常に
年間3~4回転させます。
数倍の価格差がある安価な海外産の農産物や近代農業の慣行栽培野菜と対抗できない
とすれば、日本の農業は小さな農地でしかなし得ない労力と手間の掛かる品質や健全
さを追求した高品質野菜を生産し、安価な海外産の農産物に対抗しようとしています。
それを実現するためには、多品目生産に携わるグループ営農が必要となり、消費者と
直接向き合うことが必要となります。
次の項で述べますが、高品質野菜や穀類は必ず低窒素栽培に行き着きます。
高集約型農業だからといって有機肥料などを多投すると、化学肥料と同じく高窒素
土壌となり、土壌は汚れ、品質は落ちていきます。
草・藁・籾殻・葉っぱ・木屑などの炭素分の多い植物性有機物は土を育てていきま
すが、肥料は野菜を育てるが土は育ててはくれないのです。肥えた土は安定した収量
が確保できますし、反当収量は粗放農業の2倍以上となります。
慣行野菜栽培では反当年間売上800千円が精一杯ですが、5年以上土作りを行った
圃場では反当2,000千円以上の売上となり、20年を経過すると反当3,000
千円にもなります。
品質で勝負するとすれば、消費者の支持を得ることが重要になります。質で評価を
得たい農業者は流通を介すること無く消費者と直接やりとりができる直接販売方式が
適しているということになります。
消費者と直接向き合うためには品質志向の農業者は必ずマーケティング能力(販売
ターゲット戦略・商品開発能力・消費者とのコミュニケーション能力など)が必要
となってきます。これは別項で後述致します。